この会社なら、何を売っても増収増益を続けるだろう。

この会社について今さら細かく説明する必要はない。
48年も増収増益を続ける会社。
しかも商品は寒天。
それ自体に特徴も無ければ、プレミアムもない。
誰でも売れる。だからライバルは山のようにいる。
その中で勝つのだから、
きっとこの会社ならば、何を売っても増収を続けるのだと思う。

多くの経営者が、この会社の手法を学ぼうと、本を買う。
しかし、具体性のある方法はほとんど手に入らない。
ごく当たり前のことと、つかみどころの無い高尚な話ばかりが書かれているからだ。

「毎年、商品やサービスに付加価値を与えれば伸びる」
「お客様の立場に立ったものづくりとサービスを心がける」
「研究開発への投資が大事」
「出来るだけ定価販売を心がけ、値引きをしない」
「会社経営の要諦はファン作り」
「社員が前より幸せになった度合いが会社の成長」
「売れるからと言って作り過ぎない」
「仕入先を大切にする」
「遠くを計る経営が大事」

そして、これまで伊那食品を引っ張ってきた会長の塚越氏は言う。
「会社経営に即効薬は無い。当たり前のことを当たり前にやるだけ」

それは確かにそのとおりだと思う。
しかし会社にはいろんな個性がある。
即効性のある方法を5~6年ごとに繰り返し急速に成長する会社もある。
すべての会社が伊那食品のような哲学を持つ必要はないと思う。

私たちはなんとしてもこの不況を乗り切らねばならない。
きれいごとは言ってられない。
短期的な視点で成果をあげていくことを、堂々と望むべきだと思う。

いい会社をつくりましょう。

日本でいちばん大切にしたい社会

年輪経営

関 連 書 籍

塚越 寛 会長

塚越 寛 会長

地元に住む人間にしか分からない自然とこの会社に吸い込まれていく感覚

誤解してはならないことがある。
それは、伊那食品が行う方法の中にも、短期的に成果を出していく仕組みがあるということだ。
会社は、既存客だけで成長を続けることは出来ない。
即効性のある集客、思わず買わせてしまう仕組み、強烈に信者化させる方法があるから伸び続けられる。
「遠くを計る経営が大事」と言う伊那食品にも、目の前のお客を確実に獲得していく方法があるのだ。

なぜそれが分かるのかと言うと、
私は伊那食品の隣町に住んでいるからだ。
そして実際に、この会社の仕組みに乗せられて、商品を買った体験をしている。
今では完全なる、信者となっている。

その仕組みは、彼らが意図的にやっているのか無意識にやっているかは分からないが、
こちらは何のストレスもなく、気持ちよく吸い込まれていく感覚がある。
そして 「一生、この会社と歩んで生きたい」 「この会社の商品を買って応援していくべきだ
などと思ってしまう。
それほど激しく、自分の正義感と結びついてしまうのである。

小さな社会貢献を行い、多くの人を自社の営業マンに変えてしまう!

伊那食品は口コミがすごい。
地域の住人がこの会社の営業マンである。
この会社を知らぬ者は長野県民とはいえない。
もう20年も昔になるが、当時私がお付き合いしていた女性も、
「デザートなら伊那食品、勤めるなら伊那食品」などと言っていた。

しかし聞こえてくる評判は、商品や価格のことではない。
この会社が行っている取り組みについての話ばかりが聞こえてくる。
その話を聞き終わると、ほとんどの人はこの会社の商品を買うようになる
実際に私が聞いた、この会社の取り組みとはいったいどのようなものか?

「伊那食品の社員は、私生活でもスーパーなんかの入り口には車を停めないんだよ。
そこは妊婦さんや体の不自由な人が停められるように、空けておくんだって」

私は、始めてこの話を聞いたとき 「えらく気合の入った会社だな」と思った。
そして他にもいろんな取り組みをしていることを聞かされた。

・会社の庭はいつも開放されていて、誰が何をしてもいいことにしている。
 だから勝手に野球をする親子もいるし、保育園児が集まってお弁当を広げたりしている。
・社内はお掃除されてピカピカ。
 会社の外でもボランティアでゴミ拾いをどんどんする。
・社員は車通勤する際に、右折しない。
 自分が右折すると渋滞を起こして排気ガスが出るから。
・自然を大切にする。
 会社よりも木が優先。木に合わせて会社を建てたのであちこちが坂になっている。

いろいろやっているが、要は「人と自然のために小さな取り組みを行っている」という話だった。
ひとつひとつはどれも当たり前で、誰でも出来ることばかりだが、
私は自然と尊敬の念を抱き 「この会社の作る商品なら、一度は食べてみたいなぁ」と、
素直に思った。

会社の庭で野球をする親子

会社の庭で野球をする親子

ピカピカの社内

ピカピカの社内

強烈な口コミ発生の瞬間

実はこの 「小さな取り組みの話」 こそが、口コミのウィルスなのである。
このウィルスに触れると、ほとんどの人は感染する。
感染すると、最低でも20~30人にしゃべることになる。
その人たちがまた、20~30人にしゃべる。
この調子で、たった5階層の口コミで320万人に感染することになる。
売れて売れて困るのも、うなずける。

小さな社会貢献的な取り組み、そして強い口コミ・・・
伊那食品だけが繁盛する「肝」がここにある。

ではなぜ 「小さな取り組みの話」 が、これほど激しく口コミされていくのか?
それは、人々がこの会社に対して 「尊敬の念」 を抱くようになるからだ。
話を聞けば誰しも 「人様のために黙々と活動する会社、いいねー!」 と素直に思う。
自分の奥底に眠る正義感と結びつき、黙っていられなくなる。

そして、しゃべることで自分も人様のために働いた気分になる
だから何かにとりつかれたように、しゃべりまくるのである。

これが口コミ発生の、真実の瞬間である。
口コミなど、ただ起こるものではない。
起こる原因があるから起こる。

今、商品や価格の評判は口コミされないと言われている。
しかし 「尊敬の念」 は、人から人へと簡単に伝わっていく。

そしてしゃべった人も、それを聞いた人も、最後にはこう思うようになる。
「ここまで人の為にコツコツ取り組む会社の商品なら、一度は買ってみたい」
「これからは、伊那食品にような温かい会社と一緒に生きていきたい」

お客は人生さえも伊那食品と溶け合わせて考えるようになる。
他社が伊那食品に絶対に勝てない真の理由がここにある。

なぜ、不景気になればなるほど、この会社の商品は売れるのか?

もはや、従来の広告宣伝のやり方では、お客を集めることができなくなったと言われている。
理由は、不況のせいもあるが、それ以上に、消費者が変わったからだ。

お客はもう、その商品が欲しい欲しくない、という判断では買わない。
その商品が好きか嫌いか、という判断では買わない。
お客の頭の中は180度、変わってしまった。

お客が今思っているのは、
その会社のやっている取り組みに、賛成か反対か」という判断で買うようになった。
消費者は、その会社が取り組む活動そのものに深い関心を示すようになったのだ。
理由は、その会社の本質を見抜くためである。

こんな格言をご存知だろうか。
「相手の本質を見抜くには、その人の言っていることに注目するのではなく、行動している姿を見なさい」
まさにお客は、本質を見抜くために、その会社がどんな活動をしているのかを見るようになったのである。

もはや従来のような広告宣伝では、集客の役目を果たさない。
今後は、地域における社会貢献活動そのものが、集客活動となる

この新たな流れに乗れない会社からジリ貧となり、最後は淘汰されるとさえ言われている。
伊那食品工業(株)はこの流れに乗っている。
だから不況になっても売上げが落ちない。

逆に、世の中が荒れるほど、お客は集まる。
なぜなら、多くの消費者が、精神的なよりどころとして、この会社に依存していくからだ
商品や価格の結びつきであれば、経済的に苦しくなれば、真っ先に切られてしまう。
しかし、お客の正義感と結びつけば、離れていかないのである。

すべては雲をつかむような話・・・しかし成果を出す会社がどんどん出ている

「社会貢献なんかをやっても、売り上げがあがるわけない」
私は3年前までそう思っていた。
ところが生の成功事例を知った時に、すべての考えが変わった。
すでに様々な会社が、成果を上げ始めていたのだ。
事例を紹介しよう。

まずは、ボルビックの「1L for 10Lプログラム」
会社側は、ボルヴィックが1ℓ売れるたびにアフリカに10ℓの水を提供する。
お客は、ボルビックを買うことで人助けをしたことになる。
この取り組みが消費者にウケ、前年比131%増の売上アップとなった。

次はアサヒビールの「うまいを明日へ!プロジェクト」
会社側は、ビールが1本売れるたびに1円を寄付する。
寄付する先は、自然や環境を未来へ継承していくための活動に対して提供する。
お客は、アサヒのビールを買うことで社会貢献をしたことになる。
この取り組みが消費者にウケ、前年比180%増の売上アップとなった。

花王のピンクリボンキャンペーン。
乳がんの早期発見、早期治療の大切さを伝える社会貢献活動を行った。
花王のビューティアドバイザーや、カネボウ化粧品のカウンセラーが、
化粧品コーナーに来店したお客に、早期発見のためのリーフレットを配布。
花王は人を救うという活動を通して消費者との関係構築に成功し、売上を向上させた。
お客から「早期発見で命拾いした」という感謝の言葉も多く届いたとのことだ。

通販各社も取り組みを始めている。
寄付の付いた商品を用意し、1個売れるごとにNPO団体へ寄付をする。
取り組みの狙いは「買えば社会貢献できる」と消費者に訴えることで、
顧客の購買意欲を高めることである。
「今、何が消費者の背中を押すのか」を知り尽くしている通販各社は、
社会貢献活動への取り組みに意欲的なのだそうだ。

数年前まで、通販会社が人助けの活動をするなど、考えられないことだった。
しかし今、それが当然となっている。
これからは中小企業も、社会貢献に取り組むのが当たり前になると言われている。
なぜなら現実的に業績向上の効果があるからだ。

恐らく中小企業における社会貢献への取り組みは、小規模なものになるであろう。
大企業のように大きなキャンペーンを張り、団体への寄付を中心にしたものではなく、
規模は小さくても、地域に根付いた形で具体性のある活動を行っていくようになる。

ボルビック


アサヒビール


ピンクリボン


通信販売